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織田秀和

移籍ルールの変化に伴う新しい選手獲得戦略

相変わらず、というか、最近本当に神懸かっている広島強化部の仕事であるが、最近の獲得状況を見ると移籍に際して移籍金を安く上げるための手を打っていることが分かる。

  • 西川:契約を一年残して完全移籍(←大分)
  • 山岸:契約を一年残して期限付き移籍(←川崎F)
  • 山崎(決定):契約を一年残して期限付き移籍(←G大阪)
  • 工藤(獲得失敗):今年で契約満了(←千葉)
  • 駒野(獲得失敗):今年で契約満了(←磐田)

西川は今年の目玉だったと思われるので、今回は外して考えたい。

今年で契約満了の選手を狙う

これは今回どこのチームも織り込み済みというか、安く獲得するための基本戦略である。いわゆる移籍金が撤廃された(ただし、23歳以下の選手には育成費が必要。陽介の場合は6年分の4,800万円とみられる)ため、23歳以上の選手については移籍に際して支払う金額がゼロになるためである。

確かに移籍金はゼロになる。しかし、こういう場合には色々なクラブが狙いに来るものだ。しかも、デフォで在籍クラブがライバルになり、かつ、それは強力である。移籍することについて、リスクが目立ってしまうことは想像に難くない。

「契約一年残しの期限付き移籍」という新スキーム

いやまあ、新スキーム!というほどのものでもないのだけど。契約を一年残して期限付きで移籍、その後一年見てどうするか決める、というのはクラブ間で上手くリスクをおさえた方法だと思うのである。

移籍元の思惑

まずは移籍元から考えてみる。

「いやー、この選手このままだと出場出来るかどうか微妙なんだよなぁ。契約期間一年残ってて完全移籍だと数千万円くらいにはなりそうだし、オファーはなさそう。期限付きなら期限付き移籍金は数百万円程度だけど、このままだと契約しなさそうだからそれでもいいかなぁ。交渉自体は一年後も出来るしね。」

完全移籍だと即戦力級の選手はどうしても数千万円~億円単位でかかってしまう(寿人で1.6億円、駒野で3億円)。例えば山崎だと29歳という年齢はあるものの、3,000~5,000万円くらいはかかるだろうと思われる。それを1年とはいえ、おそらく300~500万円程度の期限付き移籍金で先にツバつけられるのは大きい。まあ、もともと完全移籍前提で交渉をして、期限付き移籍金を多めに支払っているのかも知れない。山崎の移籍コメントから考えても、先に完全移籍前提っぽいし(じゃなけりゃ「一生忘れません」とか書かないよね)。

クラブからしても、完全移籍だけを考えていて結局オファーが無く、1年間年俸を払って、かつ、0円で移籍してくれるよりもいい話ではあるし、選手のタメを考えても、出場出来るところでプレーしてくれるのがよいわけだ。もちろん、(完全移籍前提とか言いましたが)使える状況になったら戻して使うというオプションも残しているはずだから、悪くない選択なのではないかと思う。

移籍先の思惑

次に、移籍先(この場合、広島)を考えてみる。

「あの選手欲しいんだけど、契約期間一年残ってて完全移籍だと数千万。手が出ねえ!しかも、ユキッチみたいに45万ドル払っても大外れ、っていうリスクもあるしなぁ。期限付きなら最悪一年後に元か別のところに行ってしまうけど、それまでにフィットしていたら残る交渉もやりやすい。ダメだったら期限付き移籍金無駄になるけど、完全移籍金をムダにするよりはいい。」

広島のようにお金のないクラブにとって、選手獲得時にもっとも避けなければならないのが「大外れの完全移籍」である。なぜなら、リスクの大きさを数で希薄化できないから。お金があるクラブであれば、完全移籍で沢山の選手を獲って、5人中1人が全然ダメだったとしてもまあ、どうにかなる。しかし、小さいクラブにとっては大枚はたいて獲得した一人が外れると目も当てられない。クラブの財政すら揺るがしかねない。そこで考えられているのが上記のような「完全移籍前提の期限付き移籍」である。

移籍元の項で書いたように、期限付き移籍は獲得費用がかなりおさえられる。5~10分の1にはなるだろう。これは大きい。この戦略を広島が採っているというのも当然である。

前提となる「広島サッカーへの自信」

そう都合良くリスクが減少するだけではない。

期限付き移籍と言うことは、結局一年後には戻る可能性がある。当然、完全移籍の場合はそのリスクは少ない。こういう移籍戦略を採用する背景は、期限付き移籍で広島に加入し、フィットしたら高確率で広島への(フリーでの)完全移籍を望むに違いないという自信である。もし、広島でプレーし、中心選手となり、それでもなおかつ、広島よりも他のチームの方がよい、と思われてしまう確率が高い場合、この戦略は功を奏さない。期限付き移籍金だけが積み重なり、効率的ではない。この戦略が有効であるためには、「安い(期限付き)移籍金で期限付き移籍の後、フリーで完全移籍を選択してくれる」という前提なしには成り立たないのである。

昨年の李忠成以降、広島への移籍理由、移籍に際するコメントとして「質の高い広島のサッカー」的なことを出してくれている。

以前、魅力的な、選手が成長できるサッカーを見せていくことが広島の選手獲得力につながると書いたことがあるが、この戦略はまさにそれをベースにしているわけだ。選手の満足度=金銭的報酬+精神的報酬なのだから、やりがいや成長できている感、チームの中心感、等を与えることで金額を抑えることも可能なはずである。

織田強化部長がんばれー。マジで期待してます。

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